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MFTを行った症例のご紹介〜永久歯列期③〜
非抜歯にて治療を行なった叢生と交叉咬合をともなう重度の開咬症例のご紹介です。
20代男性の患者さんです。
前歯部の広範囲で重度の開咬(部分的に上下の歯の接触が妨げられている状態)となっており咀嚼・発音障害が認められます。上下顎歯列に叢生(ガタガタの歯並び)を認め、左側側方歯部が交叉咬合を呈しています。
安静時での舌は低舌位となっており、嚥下時や発音時には舌が前に出てくる舌突出癖も見られました。
治療前
矯正治療開始と同時に開咬の原因の1つである舌突出癖の改善のためにMFTを行いました。
まず舌を置いておく正しいポジション(スポット)の確認と舌癖トレーニングのお話を聞いていただきました。舌癖トレーニングでは、舌をスポットにおいておく力をつけるトレーニング(ポッピング)をお伝えしました。
上顎歯列に可撤式のExpansion plateを用いて側方拡大を行なった後、ブラケット装置を装着し歯列のLevelingを実施、Up&Downエラスティックスを装着して治療を行いました。
Up&Downエラスティックスとは・・・
患者さん自身で装着していただく取り外しのできる小さな輪ゴムです。
ゴムの掛け方や掛ける部位は様々で、それによって歯の動きも異なっていきますので、先生の指示通りに患者さん自身でブラケットに引っ掛けて使用して頂きます。装着期間は、患者さんによって異なります。
装着時間は18時間以上装着するのが望ましいです。
ブラケット装着、Up&Down開始時
まだ前歯部から側方歯部にかけて開咬状態です。意識をしないと、舌は低舌位(スポットではなく舌が舌に落ちている状態)になっています。エラスティックスの装着と舌癖トレーニングも継続して行うようお願いしました。
エラスティックス開始から1ヶ月経過
舌癖トレーニングの継続により、舌をスポットにおいておく力がついてきました。エラスティックスの効果と舌癖の改善によりかみ合わせが改善してきました。
エラスティックス開始から4ヶ月経過
さらに前歯部のかみ合わせが深くなっているのがわかります。
矯正治療中は患者さんの良好な協力により舌癖トレーニングとエラスティックス(取り外しのできるゴム)を併用し、前歯部の良い咬合を得ることができました。。
動的処置終了時
非抜歯にて歯列の整直と咬み合わせを確立することができました。
開咬(部分的に上下の歯の接触が妨げられている状態)が改善され、前歯で細いもの薄い食べ物でもかみ切れる機能的な咬み合わせを得ることができました。
ブラッケット撤去後、保定のために上の歯にソフトリテーナーを使用してもらい経過観察に入りました。
経過観察終了時
保定期間開始時と比較すると、舌癖の影響か、前歯のかみ合わせが少し浅く前歯が前に押し出されてきています。
再度舌癖トレーニングを行い、舌の正しいポジションを再認識してもらいました。